[コメント] ウォッチメン(2009/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
はっきり言って、原作も映画も揃ってオチが大事な映画である。
いわば冷戦を止めるべく頭をひねり出した究極の人間のオジマンディアスが考え出した悪魔的な天然ボケ発想が最高に恐ろしい。
それは米ソとは全く関係ない共通の敵を出すこと、異次元からやってきた怪獣をニューヨークで出現させて大虐殺を起こすことである。
これはいわば原爆投下=大きな正義のために犠牲になる少数市民のメタファーである。
原爆投下により日本を諦めさせて平和にする(まぁ、実際は来襲するソビエトへのみせしめというものが根底にあった、実際にソビエトが日本にきたら恐らく原爆投下なんかよりも酷くなったでしょうな)史実の原爆投下やその是非はともかくとしてこれは大きな正義つまり平和を実行するんだったら少数の犠牲もやむを得ないという現実の政治に対するムーアなりの「でもその中で死ぬ人もいるし、その人の中にはその人の人生だってある」というメッセージだったのである。
もっといえば実は原爆投下のことをアメリカ人でさえ恐ろしく感じているという嫌な真実を明かしてしまったかなりアメリカ史というか世界史にも残る漫画である。
これがまた皮肉がきいており、今amazonでも原作コミックが売れてるかどうかわかんないので早めに買っておいたほうがいいだろう。
で、映画の話だがアクションは確かにいいけど別にそんなモンはこの映画で期待してないしキャスティングもロールシャッハ以外は基本的にイマイチで脚本も作品都合上仕方ないんだろうけど色々はしょりすぎで全くコミックを読んでない人間には不親切な映画である。
っていうか、何よりもオチがダメ。
原作のオチはイカだからよかった、異次元からきたイカ怪獣という冷戦とは全く関係ない存在=非現実的な存在がでてくるからこそ冷戦が終結し完全な平和が訪れるというのがかなり腑に落ちるのにそれを改善してドクターマンハッタンの暴走として描くなんてまずありえない。
もしもそれを現実に実行したら世界中がドクターマンハッタンの管理不足だったアメリカへの批判が集中して余計に冷戦が酷くなって世界終末は早まるだけでしょうが・・・。
っつーか、あそこでヒーローたちが「アホかおめーわ」とつっこみ真実を明かしたらオジマンディアスが世界共通の敵となって世界は平和になるわな、いろんな意味で。
なんというかこんな映画化ならしてほしくなかった、正直言って。
残酷描写とかチンコとか変なパロディとかアクションとかでがんばって再現してるでしょ!?とみせてもはっきりいってそんなモン期待してねぇから、そういうのがウリのアメコミ映画じゃないから!これ!
とまぁ、原作を知らない人間には置いてけぼりで原作を知ってる人間からすれば肩透かしで全く面白みにかけるウォッチメンでしたよ!えぇ!
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