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[コメント] COLD WAR あの歌、2つの心(2018/ポーランド=英=仏)

これぞ映画!シャープな映像と奥深い音響が美しすぎる。 ズーラは激しく自分を貫く女だ。男は女に翻弄されるが、女はそのようにしか生きられないのだ。
jollyjoker

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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惹かれ合う二人の心の奥底の情熱を、カメラワーク、サウンド、演出すべて駆使して見せつけてくる監督の美意識に圧倒される。『イーダ』での作風を引き継ぎながら、余分な説明を省いた表現で、二人の湧き上がる気持ちを最大限切り取る演出が的確だ。戦時下の歴史的背景を承知の上でのストーリー展開も、知的な監督ならではだろう。ソ連の圧力、民族の誇り、亡命の画策、西側文化の享受や密告。歴史に翻弄される人間は、それでも自身の生き方を貫いたいのだと伝わってくる。

ズーラの激しい性格とヴィクトルのジワジワと抑えられない激情を軸に、俳優の視線とピアノの音や動きでそれを増幅していくカメラ。民族音楽と共に、ポーランド語の発音の美しさにも惹かれるのは、繊細な音響によるのだろう。時代に惑わされながらも思いを閉じ込めきれない二人を、最小限の場面とモノトーンで想像力をかきたてる。

オープニングとラストの教会から、時の流れを象徴的に映しだすカメラ。 ヴィクトルとズーラが惹かれあう瞬間の目線と、二人がいくつものシーンでかわす視線。 ヴィクトルが部屋に戻るとベッドに女がうつ伏せに横たわっていという設定。 湖に飛び込んだズーラが歌いながら浮遊しているカット。 すべてのショットに計算されつくした構図とセンスがうかがえる。

ドキュメンタリーからキャリアをスタートさせた監督ならではの、シャープで迷いのない視点。『イーダ』『ゴッホ 最期の手紙』の撮影監督はダイナミックに対象を捉える。

これらを音楽という脇役が主役張りに畳みかけてくるのだ。2019年のベストとしたい。

(評価:★5)

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