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[コメント] 白鯨との闘い(2016/米)

悪い映画じゃない。船という狭い空間を舞台にしていること、そして3Dを意識したためかカメラに被写体が寄ったクローズアップが多すぎるところはもちろん批判されてしかるべき点だとは思う。しかし少なくとも内面・心理ではなく外面・行動を優先して撮ろうとしている。回想形式は映画を停滞させるどころか撮っても映像映えしない場面の省略に一役買っている。
Sigenoriyuki

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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嵐の中のスペクタクルや捕鯨シークエンスを見るとどうもロン・ハワードは特撮の使い方が下手なようだ。空撮や水中撮影を交えた多種多様なアングルから描写されているが、縦横無尽なアングルというより人間の視点というものをまったく考慮していない杜撰な画面にしか思えぬ。白鯨の大きさや動きにしても非現実的過ぎてまったく恐ろしさを感じられない。おかげで見せ場であるはずのVFXが多用されるシーンが一番つまらないという本末転倒な事態に陥ってしまっている。この映画で一番サスペンスフルな場面は白鯨に引っ張られたいかりが船員に襲い掛かる場面である。我々はまるで実感がわかない馬鹿みたいに巨大な怪物よりも実際に存在し触れることのできる物体の方により強く恐怖を感じる。そしてだからこそ多くのモンスター映画に関わるスタッフは今なお頭を悩ませ続けているのだ。

私がこの映画で一番感動したところはラストの雨の中でクリス・ヘムズワーストム・ホランドが別れを告げる場面だ。この場面ではトム・ホランドの頬に彼本人の涙ともただの雨粒とも見て取れる一滴の水滴が流れ落ちる様子が1カット収められている。これがトム・ホランドの演技によって流された涙だとはっきりわかったならば私の心はまるで動かなかっただろう。あくまでそれが偶然涙のように流れたかのように画面に映っているからこそ、一つの奇跡を目撃したような感動があるのだ。

(評価:★3)

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