[コメント] 団地七つの大罪(1964/日)
厳重な資格審査と大難関の抽選を経てやっと手に入る 全サラリーマン憧れの鉄とコンクリートで出来た現代の城 それが団地である。という団地礼賛から映画は始まる のだが・・・
第4話のエピソード中、加東大介演じる父親が、自分たち家族のことを「捕虜」という表現で語る場面がある。最近作られたドラマなら「捕虜」ではなく「奴隷」等の言葉を用いたと思うのだが、まだまだ戦後20年足らずの昭和30年代という時代では、この言葉がぴったりだったのかもしれない。
今の日本人は忘れさせられ自覚すらなくなっている事なのだが、戦後70年以上経た現在でも、私たちは敗戦国の住民として戦勝国が提示してくる価値観等を実質的には押し付けられており、正しく捕虜同然の状況のままであって、真の意味での日本の開放は未だ許されていないことをこの第4話から考えさせられる。
捕虜とも言えるかもしれない状況によって、日本本来の価値観がどんどん崩れて行っている事を、この監督は加東大介の台詞によって嘆いているように思えた。
ぶっきらぼうで無愛想であっても心では常に謙っているのが本来の日本の精神性であって、この話に登場する小さい女の子のように、口では上品に振舞っていても驕る性根が見えてしまうというのは全く日本的ではない。
自分の父親を呼ぶときは「とうちゃん」で良く、他人の父親には「おじ様」と呼ばなければならない。こんなあたり前だった事を私は忘れてしまっていた。
結局この監督は、冒頭では団地を礼賛しておきながら、実のところは団地に象徴されている現代日本を扱き下ろしている。
因みに:古い電話ボックスとか洗濯洗剤ザブとか懐かしい背景や小道具、東宝特撮でも御馴染みの俳優さんたちの懐かしい顔、それらが見れただけでも観た価値があった。
■2017年4月自宅にて鑑賞■
2017/04/03
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