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[コメント] アポロンの地獄(1967/伊)

神話世界から現代という地獄へ落ちたオイディプス。人間に原罪という苦しみを与えた神に対しての憎しみの詩・・・。
Myrath

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







--------シネスケのレビューを読む前に絶対観て欲しい映画---------

------ (機会があれば是非若いうちに観ておきたい名作映画)-----

監督は無神論者ということだが、本当にそうだったのだろうか。何らかの強い信仰心があったからこのような作品が作れたように思えるのだが。パゾリーニは神を強く求めることで神に対する憎しみも強くなって行ってたのではないだろうか。そしてこの映画「アポロンの地獄」が出来上がる。人間に原罪という苦しみを与えた創造主に対しての憎しみの詩・・・とも受け取れる作品。私はこの作品を何度か観てそんな風に感じた。

人は若い時代、時折り「生まれてきた」という運命を呪う。

どこから来てどこへ行くのか、そして自分は何者なのか。

生まれてきた意味を知ろうとすればするほど、

自分自身を知ろうとすればするほど恐ろしくなる。

自分自身が見えかけた時に襲ってくる自己の中の闇や恐怖に堪えきれず

盲目になることを選ぶ他なくなる。

・・・こういう物語として20歳台に初鑑賞。

初鑑賞時のラスト、私は感動して泣いてしまった。

当時何度か観て気が付いたのだが、その理由は私の場合は「音」によるものだった。この作品といえば「映像」の美しさ「脚本」の素晴らしさを多くの人が絶賛しているし私もそうなのだが、ラストでの感動のわけは、私の場合だけなのかもしれないが、リコーダーの旋律が大きな理由だった。

神話パートにてオイディプスの旅路にずっと纏わり付くかのように延々と漂う神秘的で民族音楽風な旋律が奏でられている。その旋律と全く同じ旋律を現代パートのオイディプスがリコーダーで吹くのだが、それが非常に安心感を与えてくれる。

同じメロディなのだが、

神話パートでは音程が不安定で全く平均律等ではなく、

現代パートでは平均律としてほぼ安定した音程。

神話パートでの不安感としての旋律は

現代パートでは安心感としての旋律へと変化している。

但しかなり切ないメロディーなので安心感と言うより安堵感のような「終わった」という雰囲気だとも言える。

こういった音の芸術もラストに存在している「アポロンの地獄」は、「映像」「脚本」「音」のどれもが素晴らしく、極限の美を作り出している名作だ。

因みに-------------------------------

ラストのリコーダーで、もうひとつ別のメロディーを吹いているが、その曲がまたなんとも美しい。最近ネット検索をして分かったのだがロシアの「同志は倒れぬ」という曲だった。政治的な歌のようであるが、工場の横でひっそり吹きメロディーの途中で止めるということはネオレアリズモやプロレタリア文学の虚しさや敗北を表現しているように思えた。でも本当のところは私には難し過ぎてよくわからない。いずれにしてもロシア臭ぷんぷん香る日本人心(演歌魂)をくすぐる哀愁メロディーである。

(評価:★5)

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