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[コメント] ラ・ブーム(1980/仏)

なんだこの話?お前、誰だよ?
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







40周年記念デジタル・リマスター版にて恥ずかしながら初鑑賞。40年前の私はまだ若く、エヴァに搭乗できるかどうかくらいの年齢だったので、フランス映画なんぞ観てませんでした。その後、大学生くらいになってフランス映画の洗礼を受けるんですが、ジャンヌ・モローやカトリーヌ・ドヌーヴといった大人の女性がお相手だったもんで、こんな小娘には興味なくてね。

そうした大人の女性たちのフランス映画って、伝統的に「女が男を振り回す」世界だと思うんです。厳密には、男視点で、女に振り回されて「女はワカラン」って映画。ところがこの映画は、恋に恋する小娘マルソーが「振り回される側」で話が進むんです。いや、正確には、ソフィー・マルソー単体の話ではなくて、友達や母親も含めた「女たち」の恋物語なんですがね。ところがところが、あっと驚くオーラス。「誰だお前?」と思う間もなく、小娘マルソーが「振り回す側」に大変身する予感で映画は終わります。なんだこの話?

そうか!小娘マルソーが小悪魔マルソーに堕ちる瞬間の物語だったんだ(そうか?)

約40年後のいま観て興味深いのは、その恋愛・結婚に対する価値観。現在のフランスの離婚率は30%、パリに至っては50%だそうですが、この映画が作られた1980年時点では(40周年は82年の日本公開のこと)、フランスでさえも「元の鞘に収まる」価値観が勝ったんでしょうね。アメリカでは前年の79年に『クレイマー、クレイマー』が撮られています。「離婚」が社会問題化してきた時代だったのでしょう。

ここで思ったのが、「元鞘に収まる」理由が、「家族」とか「子供のために」とかいう価値観ではないのです。藤田嗣治の彼女だったらしい婆さんの奔放な恋愛遍歴も含めて、「個人の幸せ」の追求が根底にあるように思います。今どきのフランス映画が、やたら「家族」とか「絆」とかをテーマにしているのと大違いです(もしかするとそういう映画だけが日本に輸入されているのかもしれませんが)。

(2023.01.01 新宿シネマカリテにて40周年記念デジタル・リマスター版を鑑賞)

(評価:★2)

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