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[コメント] ブルジョワジーの秘かな愉しみ(1972/仏)

ブニュエル翁、ここから「おふざけ3部作(<勝手に命名)」始める。いや、大変哲学的なんですよ。ウププ。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







今回は約20年ぶりの再鑑賞でしたが、最初に観たのは30数年前。当時大学生(18,9歳)の私には、何が起こっているのかチンプンカンプンだった覚えがあります。田舎から出てきたばかりのウブな青年は、まだブニュエルがどんな人かも知らなければ、映画の見方自体も分かっていなかった。簡単に言うと、「教訓のない寓話」という概念を持ち合わせていなかった。昔話でも何でも必ず「教訓」があると教え込んでいる日本の教育が悪い。

金持ちでも夜中にこっそり冷蔵庫開けてつまみ食いしちゃうんだよねえ=ブルジョアジーの密かな愉しみ・・・というのが若い頃の私の解釈でした。なんと幼稚な。 大人になれば分かります。密かな愉しみは「食欲と性欲」なんですよ。つまり、夜中のつまみ食いと、裏庭での情事は同じことなのです。欲が満たされないことで(欲を渇望することで)露呈する本性。これがこの映画の「表」の解釈。

6人のブルジョアが主人公と言われますが、よく見ると、駐仏大使=フェルナンド・レイ(また!)を中心に展開されています。そう、彼はフランス人の顔をしてブルジョアの一角に収まっていますが、中南米にある(らしい)ミランダ共和国(とかいう国)の人なのです。おフランス野郎からしたら「外様」。実際、「貴方のお国ではチョメチョメらしいですな」と的外れな(時に侮蔑的な)ことをしばしば言います。もしかするとブルジョア仲間だって、密輸の恩恵があるから付き合ってるに過ぎず、腹の中ではどう思ってるか分かりません。実際、「ミランダに招待しますよ」と言っても、誰もいい顔をしない。「外交官」という肩書に付き合っているのであって、人としては見下しているのかもしれない。実際、司祭に対してもその「服装」で敬意を払うのであって、庭師の格好で「司祭(自称)」と言っても放り出してしまう。

ブルジョアジー(お高くとまったおフランス野郎)の密かな愉しみ=他人を蔑むこと

これが私の思う、この映画の(裏)テーマです。実際、ブニュエルもスペイン人ですしね(メキシコに帰化してるけど)。

ただ、あの一本道を歩く6人は、ウブじゃなくなった今観ても意味が分からないんだよなあ。

(2022.01.23 角川シネマ有楽町にてデジタルリマスター版を再鑑賞)

(評価:★4)

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