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[コメント] ハッシュ!(2001/日)

ゲイカップルに優しさをみつけた孤独な女が、オナベではなく、母親になろうとする物語。母一人に父二人の家庭は果たして上手くいくのだろうか?なんて理想論な作品。030907
しど

橋口監督の作品として、今回も「同性愛ネタ」を軸とした、マイノリティが居場所を探し求める人間模様。監督の「ゲイ」の描き方は常に「マイノリティの不安定な心境」を異性愛者にも問いかけてくる。『二十才の微熱』では、ゲイと「10代」を重ねて、成長途中の不安定さを描き、『渚のシンドバット』では、それに加えて、強姦された後にノイローゼになった女の子によって、「異性の関係」まで不安定さを強調した。今回のゲイの二人は職業もあり、同棲もしていて、割合安定していたが、そこに、「孤独で不安定」な女が関わってくることで、ゲイカップルにも現実の中での不安定な状況を再認識させることになる。

この作品では、社会通念を無視した上で成り立つ理想論としての「家庭のあり方」を問いかけているようだ。子供が産まれないゲイカップルと、男ではなく父親が欲しい女が夢見る家庭像。孤独を癒やすなら、一人よりも二人、二人よりも三人の方が心強いのは理に適っている。現実社会では否定される個性を持つ三人だから、現実からかけ離れた理想にも近づくのは容易だ。当然、現実論からそれを「否定する」ことも描かれるし、対比として、現実的な生活を営んでいるつもりの出鱈目な者達に対する侮蔑も描かれる。また、強固に「現実論」を振りかざす者が、あっけなく「理想」を捨てる姿もさらりと挿入する。多少間延びした感も否めないが、描こうとするテーマが非常に面白く、また、背負った孤独を否定せず受け入れた上で問題を解決しようとする登場人物達に、強い感動を覚える。余韻だけなら☆五つかな。

余談ではあるが、「二十才の微熱」で「普通の女子大生」を演じていた片岡礼子が、今回は、荒んだ役として登場しているのが、 家庭環境設定は全く違うんだけど、どことなく、「二十歳〜」から続く人物像のような気もして、「ああ、あんな女の子でもこんな壊れた大人に成長しちゃうんだ・・・」なんて思えたのが、個人的には楽しかった。あと、相変わらず監督がさりげなく脇役のゲイとして登場してるのも良い。

(評価:★4)

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