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[コメント] BLOOD:THE LAST VAMPIRE(2000/日)

デジタルアニメの可能性と限界
FRAGILE

1966年(作品の中では明示されていない)の東京、米軍基地を舞台に人間の中に潜む吸血鬼と戦う少女を描いたアニメーション。

さて、この作品はストーリーよりもフルデジタルアニメーションという、これまでのようなセル画を使わない手法で制作されていることで注目されている。確かに最近の手を抜いたようなアニメーションとは比べものにならない素晴らしい映像が展開され、実写と見まごうばかりだ。 というより実写と同じような画面構成、構図の絵が続く。それらはこれまでのアニメーション手法からすればほとんど不可能であったものであり、驚愕すべきことなのだが、そうしたことを知らない(実写映画しか見たことのない)人にとっては何と言うことのない映像であるとも言える。

そもそも、アニメーションはその制限の上で新しい画面構成や構図に挑戦し、実写映画では不可能な映像を作り出してきた。ところが、実写映画はSFXやデジタル処理によって、そうした映像を取り込み始めている。一方で最も優れたアニメーション作品とされるこの作品は実写映画の領域に入り込んだ。これから実写とアニメーションはどのように融合し、また新しい映像を我々に提供してくれるのだろうか。残念ながら、この作品にそうした予感は感じられないのだ。

とはいえ、現在の世界の最高技術で作られた作品であることは間違いなく、良い作品ではある。もちろん、なぜ舞台が60年代なのか、なぜ米軍基地が舞台なのか、なぜ少女なのか、といった設定の疑問は山のようにあるのだけれど。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)華崎[*] 世界の終わりの果に[*]

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