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[コメント] 日本の黒い夏―冤罪―(2000/日)

良い素材も料理次第
FRAGILE

 1994年に起きた「松本サリン事件」をモチーフにした作品。第一通報者の会社員が容疑者として報道され、後にカルト集団のテロであったことが分かったという冤罪(会社員は逮捕拘留されていないので正確には冤罪とは言えないが)を検証している。

 全体の構成は事件から一年後に高校の放送部が検証を行う形となっている。ただし、舞台は彼らが話を聞いている地方TV局の会議室の一室のみで決して事件の真相を探り歩いていくものではない。

 しかも、この最上のモチーフに対する焦点が定まっていない。「容疑者報道」「容疑者と警察のやりとり」「容疑者一家と周囲の人々」「警察発表とマスコミ」など切り口がいくらでもあるのは分かるがそれを全て取り上げようとして結局どれも曖昧なままになってしまっている。特にマスコミについても「地方局と中央局」「局スタッフ内の対立」「視聴率とスポンサー」などいくつもの切り口を見せて盛り込みすぎの印象はぬぐえない。

 また、大芝居なセリフと音楽も鼻につくし、事件の再現場面には明らかにおかしな描写もある。記録映画として観ることもできようが、取り上げる人物がみんな「いい人」になってしまうのは作品が訴えている物事を一面から見ることの危うさそのもののようにも思える。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] TOBBY[*]

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