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[あらすじ] バルトの楽園〈がくえん〉(2006/日)

1914年、第1次大戦勃発。極東の独軍の本拠地、中国の青島の兵5千人に対し、日本は日英同盟により3万の軍を差し向けた。当地総督、少将ハインリッヒ(ブルーノ・ガンツ)は圧倒的な差に成す術もなかった。その丘の本部に兵が入って来る―喧嘩をした兵たちを後方に移したい、喧嘩の原因は1人の兵が空に発砲ばかりしている為だとの報告。その兵がペンダントを見せる。開くと日本の女の子―自分の娘だという。少将は怒る、「日本人は敵なんだ。戦争中なんだぞ!今度前に撃たなかったら銃殺刑だ!」。戦闘は77日間続き、結局4700人の大量捕虜を得て、日本軍の大勝に終わる。戦い済んだ原野にはあのペンダントの兵士の死体もあった。(続きます)
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日本帝国陸軍省。捕虜たちの収容に関して、省は既設の全国9か所の俘虜〈ふりょ〉収容所を3か所増やして対応することにした。軍の中では、「面倒だな。敗けたら潔く自決するのが軍人だ。それをしないような兵士は適当に詰め込んでおけばいいのだ」という声も多く聞かれた。その言葉通り、その収容所は酷いもので、ネズミ、南京虫等と犬小屋以下、いや地獄だと称する独兵もいた。その1人が、脱走した。捕まり殴る蹴るの目に会う。日本に深い恨みを抱くようになるカルル大尉だった。

そして2年後、陸軍省は全国の収容所を6か所に集約することにした。その1つが徳島の坂東(ばんどう)収容所だった。その所長は松江中佐(松平健)。ハインリッヒもそこに居た。そこでは松江所長の方針、‘生きる自由と平等’の信念から、捕虜たちと日本兵と地元民の文化的、技術的交流を認めていた、というより推奨していた。印刷、新聞の発刊、パン、菓子、ソーセージの製造、エンジニア、木工職人、スポーツ選手、西洋音楽の演奏、海水浴等。そんな事に賛同する日本将校副官の高木(國村隼)もおれば、反対する若い将校伊藤(阿部寛)もいた。そんな中、脱走兵が出る。あのカルル大尉だった。又あのペンダントの少女が訪ねて来る。そして、松江は陸軍省に呼び出される。それは、その方針の是非のみならず、松江が元会津藩士の息子という事も関わっていた。明治維新から50年が過ぎていたのだが・・・。134分。

第1次大戦中、徳島県板野郡坂東(ばんどう)町に実在した坂東俘虜(ふりょ)収容所[1917年6月〜1920年4月]を描く。日本で最初にベートーヴェンの「交響曲第9番」を演奏した事でも有名。同年の文部科学省選定作品。

尚、参考文献として「二つの山河」中村彰彦[1994年、文春文庫]が挙げられている。1994年上期の直木賞受賞作である。

(評価:★3)

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