[コメント] ミザリー(1990/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
うそ。もちろん最後まで観ました。
★4.5
それはそうと実は以前とても恐ろしい体験をしてしまった。思い切って告白するけど、自分も太ったおばさんに怪我させられて監禁されたことがあるんです。
彼女はこう言ったんです。「私、あなたの熱烈なファンなんですよ。最近公開された『ミザリー』の批評ももちろん読んだわ。シネマスケープの名コメンテーターとこうして一緒にいられるなんてまるで夢みたいね。」
更に続けて彼女はこう言ったんです。「やっぱり『ミザリー』はあなたのいう通り何よりもまずキャスティングの勝利なのよね。私もキャシー・ベイツが最初出てきたとき、これだ!と思ったわ。アニーは本当に怖い女性。あの力強そうな体型とギョロッとした睨みつける目つきなんか物凄い迫力なんですもの。でもアカデミー賞とって当然の出来よね。あとジェームズ・カーンの演技も印象深かったわ。」
尚も続けて彼女はこう言ったんです。「あなたの文章にもあったけど『ミザリー』は高レベルな娯楽スリラー映画よね。私も映画でこんなにどきどきはらはらしてしまったの久しぶりだった。確かに似たような設定の『裏窓』よりも遥かに楽しめたわ。それにラストのオチもまた思わせぶりで見事なのよね。」
まだまだ続けて彼女はこう言ったんです。「私もキングの原作をまだ読んでいないからどこまで忠実に映画化してあるのかよく分らないけど、間違いなくこれは映画なのね。例えば映画的=動画的な表現として《アニーの目つき》とか《アニーが静けさの中突然現れる描写》の指摘はとても的確だわ。ああいうのは文章で表現されるよりもずっと生き生きしているもの。静と動のホラー・スリラー的な切り替えは映画のほうに分があるみたい。」
それでも彼女は続けてこう言ったんです。「でも『ミザリー』は確かにとてもコワイ作品だけど、作り方は結構典型的だと思うの。アニーはエイリアン映画でいえばもちろんエイリアン。アニーの不在の恐怖を最大限に引き伸ばすところを被害者の視点で描いてある側面なんかはこの手の作品の王道よね。でもそれだけでは十分な説明になっていないと思っていたらあなたの分析に出会ったの。《人間が最も恐怖を覚えるものはモンスターでもエイリアンでもなく、人間そのものなのではないだろうか?》って本当に斬新な考え方で溜飲が下がったわ。」
そこまで言い終えると突然彼女の表情が一変した。「なのに、なのに何であなたはアニーを精神異常者だと決め付けるのよ!この《アニーはもちろん犯罪者であるがそれ以前に精神的に未熟な人間である。世界はアニーを中心に回っているのであり、対人関係の障害、欲望・感情のコントロール機能の欠如を見ればアニーが未形成であることは明確である。》なんて絶対に許せない!私もストーカーだっていいたいの!私はこんなにあなたのことを愛しているのに!」
言い終えるか終えないかの内に彼女は包丁を手に自分に飛び掛ってきた。
***
幸いにも私は助かった。こんなことがあったのでもう私は危険なファンを増やさないために名批評を書くのを止めにしているのだ。(えっ?)
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