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[コメント] 12人の優しい日本人(1991/日)

偉大なオリジナルと優れた脚本と。(レビューは本作と『十二人の怒れる男』のラストに言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







オリジナルが優れているからこそ、それに対するパロディーが成立する。だから、パロディーがオリジナルを超えることは極めて困難だ。だが、パロディーの名手三谷幸喜の脚本は『十二人の怒れる男』を踏襲したうえで、その結論をもう一度ひっくり返して、原点に戻すところまでもう一度展開させる。『十二人の怒れる男』における議論の運び方がかなり強引だったのに比べ、一見だらだらと惰性で続く本作における議論は実際はしっかりやり尽くされたうえで結論が導かれている。むろん本作は後に作られた作品なのだから、オリジナルに対して距離をとったり、オリジナルに足りない部分を補うこともできるのだが、そうだとしてもかなり気の利いた脚本であることは認めたい。

しかし、それでも本作はオリジナルほどの興奮は得られない。話の筋も大切なのだが、オリジナルでは多少筋が粗くともガッと観る側を引きつける画面や演出の力があったのだが、本作は脚本を踏襲しすぎているためか画面や演出に関してはオリジナルほどの求心力を得られていない。唯一画面の力を感じたのはラストのワンショットだけで、もっと議論の過程において映画ならではのパワーに吸い寄せられたかった。そこに力がないと、なんでわざわざ舞台を映画化したのかという「そもそも」の論点に戻ってしまう。惜しい作品である。

(評価:★3)

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