[コメント] 凶気の桜(2002/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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僕は本来「自己陶酔のためのナショナリズムなんざ犬に食わせてしまえ!」と思ってる人間です。いや、自己陶酔のためでなくても、僕の手元に転がってきた段階でナショナリズムは犬に食わせます。
ナショナリズムって、ちょっと背中を押してやればすぐに人種差別や選民思想に転んじゃうからです。この映画みたいに「美」をともなって語られれば、それは一層強まります。「良いもの=美しいもの=我が国」って構図が出来上がっちゃうんですよね。大体「日本って国は好きだけど日本人は嫌い」って言うけど、じゃあ日本って何?国って何?ってことでしょ。人を見ないで国を語るから、イメージだけが美しい方美しい方へ一人歩きしてっちゃうんです。
で、この映画、もしヤクザや職業右翼がいなかったらナショナリズムは素晴らしいんだねぇっていう、割と僕なんかからするとイヤな方向の映画だと思ってました。ただ、どうもそれだけじゃないみたい。右翼の親玉が在日韓国人だったり、ヒロインが異様に欧米風の顔立ちだったりして、真意をわからなくさせることに力を注いでる気がします。「国を愛せ」ではなく「考えろ」ってことですよね。主人公たちの悲惨な結末も同様。結局何の解決にもなっていないものを見て、「じゃあ自分は?」って考える映画なんだと思います。
ただし、その問題提起はどれも浅いです。韓国人だから何なの?欧米風だから何なの?っていう部分がほったらかし。そのクセ映像や表現の方には色気を出す。オープニングで窪塚がカメラに殴り掛かるシーンとか、V3とか、鼻についてしょうがない。そんなことしてるヒマがあったら、もっと張り詰めた緊張感を持った映像を撮ってほしい。大体今の幼稚園児が「V3!」とは言わんだろ。
ベテラン俳優陣も、本田博太郎を筆頭にイマイチな熱演。若手の方が光って見えるんじゃマズいよね。
とまぁ、色々けなしてはいるんですが、その姿勢は面白いなぁと思ったんで4点です。しつこいようですが、決してバイオレンス映画に弱いからだとか、窪塚洋介に弱いからだとかではありません。多分。
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