[コメント] 悲愁物語(1977/日)
物語が収束に向かうわけでもなく、全てをぶん投げるようなラストの呆気なさゆえの感動。その演出のキレもさることながら、破壊のエネルギーもまったく圧倒的。日本映画史に残る凄まじいエンディングだろう。
このラストシーンに、花束を抱えた野呂圭介が何故か居合わせている、その突拍子のなさがシュールすぎて素晴らしい。また、ヒロイン白木葉子の弟が桜の風景をバックに少女と語り合うシーンも、それについての説明がまったくないのが何とも異様だ。あの少女は一体誰なのだろうか?
本作で復帰を果たした清順は、その後『ツィゴイネルワイゼン』『陽炎座』と、ある種様式美的な世界へ向かっていくわけだが、それらの作品と較べると、「悲愁物語」の異端っぷりがますます輝いて見える。江波杏子の文字通りの怪演、交通事故のカットの何とも言えない怖さ・・・突出した細部の魅力に溢れた「変な映画」だ。
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