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[コメント] 一心太助 天下の一大事(1958/日)

朝焼けの日本橋を真っ正面から軽やかに駆けてくる錦ちゃん。「絶望です」と言われてドッと笑う魚河岸の兄ィ連。バカかというくらい晴れやかなのである。インテリがなんと言おうと、かつての日本の一般大衆の理想はこうだったのだろう。そして意外に前衛的だ。

まずはその破格のスピードとリズム感。日本映画ではないような明快なノリがある。お月見のシーンでは、ジャズとお囃子と雑音がごった煮になったようなノイズ音楽みたいなものが流れる。『鴛鴦歌合戦』とか『狸御殿』ものとか、むかしは音楽的な映画があった。日本映画がこの方向にすすまなかったのは惜しまれる。

さらに、若いころの錦ちゃんはけっこうフェミニンだ。「江戸の名物男」のはずなのに微妙に女っぽい(肌もきれいだ)のである。逆に女優陣はみんなチンころみたいで、カワイイけれども男の子のよう。こういう性別逆転も楽しい。

「絶望です」が口ぐせの幸吉は、インテリを戯画化したものだろう。しかし最後はその幸吉も幸せにしてやりめでたしめでたし。いい映画である。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] ゑぎ[*]

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