[コメント] 殺し(1962/伊)
「藪の中」話法によるミステリ風ダメ人間群像劇。当時は下層階級の実態を暴くドキュメンタリとしての意義があったんだろうけど、今見るとその登場人物達のあまりにも冴えないダメぶりに、もはや笑い転げる以外のリアクションができない。
職探しに行くはずだったのになぜか仲間とカップル狩りにいそしんでいるボンクラ少年は、狩りに失敗して返り討ちに合い、泣きながら「お前なんか死んじゃえ」なんてベタベタな捨て台詞を吐くヘタレぶりを見せてくれるし、前科持ちのヒモは女親子にどやされたり刃傷沙汰になったりしてもヘラヘラしてるし(入れ歯お母さんが可愛い)、ニヤケ笑いの元軍人は、超ダメダメなナンパをしてたかと思えば、観光ツアー客のそばをウロウロしたり飛びはねたりと思いっきり挙動不審な現地人ぶりを発揮してるし、甲斐性もないくせに結婚結婚口走るティーンズどもは悪さが見つかって川に飛び込んで逃げるし、ティーンズにからむオカマ成金なんて、カフカそっくりじゃないですか。笑い死にさせる気ですか。
お天気雨のなかを走ってトンネルの下で雨宿りする男女4人をとらえたショットや、森の美しさにはたしかに往年のベルトリッチを思わせる情緒があったと思う。しかしそれ以上に、俺にとってこの映画は、このうえもなく脱力しきったコメディです。
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[021021] 池袋新文芸坐(『赤い砂漠』と2本立て)
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