卒業制作として作られた映画なので、出来としては当然『ストレンジャー・ザン・パラダイス』や『ダウン・バイ・ロー』の方が断然上である。だが、上記2本へ行き着くジャームッシュ独特のオフビートぶりはすでにこの作品ですでにその方向性が固まっているようにも思える。

　『ストレンジャー〜』同様、何も起こらないのに惹きつける力がある作品であり、その何も起こらない様が、まさに“漂流”という雰囲気を作り出しているのである。どこへ行くかわからない不思議な力がふらふらと揺れ動いている感じ、それがこの映画、そして初期のジャームッシュ作品の魅力である気がする。

　ラストシーン、遠ざかるマンハッタンの街並みに加え、海面に揺れる波も“漂流”の雰囲気を醸し出していて美しい。