[コメント] 座頭市地獄旅(1965/日)
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長期化した座頭市シリーズは、そろそろマンネリの声が聞こえ始め、それでも尚シリーズとして続けようとする大映は、完全巻き返しで新しい風を入れることとなる。そのため、脚本にこれまでのシリーズを支えた犬塚稔から、様々な脚本家・監督にシリーズを作ってもらうこととなった。
いわばこれが新生座頭市の第一作と言うことになる。その新規巻き返しにあたり、脚本は初の伊藤大輔に、監督にシリーズ第1作の監督である三隅研次を配して作り上げられたのが本作。
それは大成功のようで、中期の座頭市の中では間違いなく良作に仕上がり、以降のシリーズ継続の足がかりとなった。
構造としては第一作の『座頭市物語』に結構似ていて、市の強さを存分に見せつけつつ、登場した浪人と奇妙な友情を育んでいくのだが、最後は互いの真剣勝負で魅せる。そのために特に後半に至っての緊張感は非常に高く、硬派な仕上がりを見せてくれた。正直物語を観始めたときは、「なんだいつも通りか」と思いこんでいたのだが、細かいストーリーがきちんきちんと畳まれ、クライマックスに収斂していく過程はかなり小気味良い。
一作目の天知茂に対応するのが本作の成田三樹夫となるが、天知のような強烈な自意識とは異なり、どこかミステリアスさを醸し出す成田の演技は見事に本作の十文字に映えていて、天知の平手とは異なる魅力を出している。
それに本作では久々に市が身障者であることを幾度も強調させる演出が入り、単に強いだけではなく、それに対しコンプレックスを持ち、それ故哀しさを持つ市という存在を際だたせるのも良い。これまでの化け物じみた市が、ようやく弱さを見せてくれたのも良し。
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