[コメント] ホワイト・オランダー(2002/米=独)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まず構成が巧い。主人公がめぐり合う3人の養母それぞれのシーンがかなり明確に区別して扱われているため全体的にメリハリが利いている。加えて各々のパートで主人公に微妙な変化が窺える。一人の人間を多面的に描くとしては面白い方法だろう。
主演のアリソン・ローマンは最初魅力に乏しいかな、と思っていたが次第に引き込まれていった。まさか自分より年上の女優だったとは・・・。それはさておき、本作品は底の浅い、単なる「かわいそうな話」に陥るのを免れている。
確かに主人公は悲惨な星の下に生まれている。彼女のような環境に生まれたら、程度の差こそあれ多くの人間が「真っ当な」人生を送り難いのではないだろうか。
少し脱線するが、印象深かったのはレニー・ゼルウィガー。この人には華があると思う。彼女が登場しただけで、映画に漂う雰囲気が独特の風味になるような気がする。そこが長所でもあり、また短所でもあるわけだが今回は作品に対する良いスパイスになっている。
ともあれ、私にはこの映画で主人公の母が肯定されているようにはどうしても思えない。プロローグ・エピローグ的に主人公による独白みたいなのが挿入されているが、これは不必要に観客を惑わせるだけだ。ミシェル・ファイファー演ずる母はやはりヒール役として捉えるのが妥当だ。
3人の里親は皆、真っ直ぐな理由で主人公を引き取ったわけではない。里親たちの人間的欠陥がもろに浮き彫りにされているが、例え彼女たちに少々の偽善や欠陥があったとしても、誰がそれを責められるだろう?いうまでもなく‘Nobody’s perfect’だ。他人の欠点は許せるものもそうでないものもあるが、無理やり暴き出す必要などどこにもない。
私が惹かれたのは主人公の精神的強さ。彼女のような状況では殊に母の影響を強烈に受けるはずなのに、跳ね除ける意思がある。そこが強い。ましてやあの母なのに。
自己の確固とした確立大いに結構。
だが、他人全てに対し傷つけるような攻撃的な生き方を送る、この映画のモチーフになっている夾竹桃のような人間は正直どうかと思う。私が主人公の母親を悪役に見立てたのはそのせいなのだ。
最後に一つだけ。私は主人公の行動や態度を賞賛したい。他人がどうであれ、無闇に流されてしまうわけにはいけないのだ。
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