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[コメント] キートンの強盗騒動(1921/米)

ハイライトと呼べるギャグの達成は見当たらずいたって低調なBAD作品
junojuna

 全般的に才気を感じさせるギャグの強度というものは見当たらず、不発の印象が否めない精彩を欠いた作品である。そのおとなしい仕上がりゆえか前作までの構成の枠組みを崩壊させてまでもギャグをアピールする逸脱のパワーもなく、救える点を絞り出して言えばエレベーターが屋上に飛び出してジョー・ロバーツをポイするところくらいか。しかし、サイレントコメディの主役、特にキートンやチャップリンにおいては、ストーリーの中でアクションが加速してその勢いがふっと途切れる動から静へとリズムに緩急が生まれる時、より一層の孤独な印象が強まる稀有な存在感を湛えており、喜劇という世界観を背負いながら悲哀を漂わせるという不思議な魅力を持っている。本作キートンにおいては、コメディの定番である追いかけっこが占める割合が大きいために、そのストーンフェイスも相まってそうした趣が際立つところは印象的である。またチャップリンにはないキートン独自のスタイルとして、本作冒頭パンの配給の列に並ぶシーンにおいて、両手をポケットに突っ込んでうつむき歩く姿は殊更にそうした感慨を強める。そうした姿をキートン映画に発見するたび、なぜか『大人は判ってくれない』のアントワーヌ・ドワネルを思わせる少年期特有のひとりぼっち感が浮き彫りになっていとけない。受動的で自虐的な世界で立ち回るキートンの作風にはそうした陰りが垣間見えるところ、一作品の出来以上に思い当たる節があり目が離せない。

(評価:★2)

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