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[コメント] はだしのゲン(1976/日)

攻撃的な笑いの多い映画で、見下す奴を笑い返してやろうという意図が徹底されてあり、三國連太郎の父ちゃんの「非国民と呼ばれるのは誇り」が全編を引っ張っている。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







彼は共産党転向者だったのか違ったのか。映画はそこまでは語らなかった。

親が融通利かないから貧乏、よくものを盗む映画で、子供たちは盗むことしか考えていない時間帯が多い。傷痍軍人の牧伸二のガラス屋を儲けさせようと、ゲンが町内のガラスを割って回る件は、資本主義社会の基盤を揺るがすような哲学的な問いかけがある。原作未読だがこの件は知っていた。学校での真面目な児童の、鬼畜米英を殺します、みたいな作文発表も露骨に描かれ、戦中教育をダイレクトに描いて驚愕を誘う。

一緒に歩いていたら投石されて、朴さんがいると虐められるから別々に帰ろうとゲンに云われて黙って離れる島田順司の朝鮮人も印象的な件だった。町内会長の曾我廼家一二三、先生の梅津栄、エロ先生の大泉滉ほかギャグ陣も充実しており、三國の屁が臭いというギャグ、「月月火水木金金」ほか子供たちの軍歌の替え歌の記録(アヒルが合いの手入れるのがいい)、金太郎のような腹巻した弟も大人しい姉も印象的。

原爆投下シーンはミニマムだが、家の下敷きになって家族五人のうち三國ら三人が亡くなる悲劇は痛々しい。屋根が持ちあげられない中、火の手が回って見捨てざるをえないのだった。左幸子の「天皇陛下様」への質問、8.15のように戦争を止められるなら、どうして始めるときに止めてくれなかったのか、始めたのは一体誰なのか、で終わる。三國−左幸子の秀作の印象。

最後に題字の下に「第一部・戦中篇」と記される。描かれたのは1945年6〜8月。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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