[コメント] 緋牡丹博徒 二代目襲名(1969/日)
彼のストイックさはあのシリーズでは稀有で貴重な存在である。誰しもがお竜さんにすけべ心を抱く中、彼だけは忠実な番犬の如く平常心を維持し続けている。
作品ごとに鶴田浩二や高倉健などが出てきて、お竜さんの前で悲劇的なストイックさを撒き散らし、お竜さんの心が多少揺らぐのが難点だが、彼等のストイックさはドラマを成立させるが故の芝居がかったストイックさである。いらいらするのだ。
それに比べて待田京介の番犬振りは素晴らしい。お竜さんのあまりの美しさに全てを放棄し、男であることも放棄した。彼は中性を選び「美」に仕えたのだ。ここに女王様と奴隷の耽美な関係すら連想させられるではないか。それでいて、いざという時の彼の番犬たる勇ましさは充分過ぎる程だ。
本作品の中の長門裕之の台詞に、「皆がお竜さんの為なら命を捨てられるという気持ちが分かった」というのがある。それがお竜さんの侠気を指しているだろうことは明白だが、一歩下がってそれが魔女=女王様に魅入られた魔力の為せる業なのかも知れないと考えてもあながち間違いでもなかろう。
「美神」に魅入られた男たちが死んでいく。嗚呼、なんて耽美な映画なのか!
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