[コメント] 突撃(1957/米)
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はっきり言って、全然分からないでしょう。キューブリックは映画というある意味普遍的な手段を用いながら、彼独自の世界観をその中に投影することに成功した数少ない真の天才の一人と言えることは間違いないと思いますが、少なくともこの作品においては、独特のカメラワークは戦場を進撃するカーク・ダグラスをひたすら真横に俯瞰していくシーン、舞踏会が行われる館での撮り回し、といったごくわずかな場面に見られるのみです。ラスト付近の唐突なハミングは、その後の彼の作品における映像と音楽とのギャップによる衝撃を生み出す一つの契機にはなっているかもしれませんが、この場面では一つの完結した意味を持ち得る場面であり、常識的な範疇に納まっているとすら言えるかもしれません。
この作品のメッセージは言うまでもなく戦争の様々な場面において無意味に失われていく命、それを救うことの出来ない人々の無力さを描くという行為それ自体にあると思われますが、ベトナム戦争以降の映画においてはこの作品を上回る迫力と人間ドラマを描いた作品はたくさんあります。キューブリック自身の『フルメタル・ジャケット』もそうですし、『ディア・ハンター』も然りと個人的には思います。法廷ものの人間ドラマもたくさんの秀作があります。
この作品は、彼の通過点の一つとして記憶されるべきではあるかもしれませんが、その後のより濃密な作品群のための準備段階にいる彼の姿はまだ試行錯誤をしている途上であり、そういう意味において興味深いものの、それ以上のものではないと言わざるを得ません。
どうでもいいですが、初めてカーク・ダグラスの作品を観て、あまりに息子が似ていることになんだか嬉しくすらなってしまいました。マイケル・ダグラスの方はその後スクリーンの外でいろいろと苦労しているようですが、個人的には好きか嫌いかと言われれば好きな俳優なので、その父親の活躍ぶりを観られたことがこの作品の最大の収穫であったかもしれません。
(2002.4.8)
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