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[コメント] キートンの案山子(1920/米)

喜劇作りの巧みさ豊かさに笑いの視点の細かさが伺えてGOOD
junojuna

 オープニングのからくり屋敷のアイデアワークは必見である。この後、数多のフォロワーワークを生むこととなった試金石としての功績は芸術表現の意匠として人類の財産といっても過言ではない豊かさがある。また、ここで見られる所帯道具に施されている“珍妙な工夫”。この“珍妙な工夫”こそがキートン映画の肝ともいえる。さらに、本作で大活躍のタレント犬「リューク」であるが、このリュークに対しての演出は驚嘆の域に達する施しである。一体何回撮り直したことだろうか。その事実は確かめる由もないが、この一点をおいても奇跡的な成果を生み出している。またシビル・シーリーがキートンの実父でもあるジョー・キートンに対する腹いせに、“こってりしたパイ”を食らわそうとするという件も、結局たいした意味にはつながらなかったが、コミカルな着想が伺えて笑いの視点の細かさに感心する。キートンお抱えのギャグマンは相当にセンスがあったに違いない。さらには、追いかけっこの流れで、川を飛び越えて渡ろうとしたキートンが、結局何を思ったか逆立ちで渡るというナンセンスっぷり。アホにも程があるのだが、こうしたブレイク感は勢いのある状況でなければ決して生まれることはないだろう。ラストは念願のシビル・シーリーと道端で拾った牧師に結婚を宣言させるという荒技で勝利するが、ラストカット、カメラを見据えて口から水を吐くキートンは実にクールであった。

(評価:★4)

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