[コメント] 真実のマレーネ・ディートリッヒ(2001/独=米)
ドキュメンタリーとしては並。 わざわざ「真実の」とつけるほど意外な事実の掘り下げもなく『ボクのおばあちゃんは伝説だった』的なまとめ方。 だが・・・。
イスラエルでのリサイタルで、主催者側はマレーネにドイツ語では歌わないように申し入れた。 聴衆の大半はナチに迫害され逃げ延びたユダヤ系難民で、彼らへの配慮であった。 しかしマレーネはその申し入れを拒否。 ナチにより失われた「祖国」を思い出してもらうため、あえてドイツ語で歌うことを主張した。
マレーネ自身、ナチへの協力を拒みアメリカに亡命、祖国を裏切った女優のレッテルを貼られ、帰るべき祖国をなくしている。 力強く「花はどこへ行った」を歌うその姿からは、マレーネの怒りと哀しみが静かに押し寄せてくる。 あふれ出る涙を押さえることも忘れて、その歌声に聴き入ってしまった。
曲が終わり、割れんばかりの喝采を聞きながら嬉しそうに微笑む彼女の目が、一瞬キラリと光る。 それはただの照明の加減かもしれないが、僕にはこの上もなく美しいものに見えた。
伝説のかげに隠された真実などいらない。 怒りを込めて歌うその姿こそ、まさに『真実のマレーネ・ディートリッヒ』にほかならないから。
Adieu Marlene. Dankeschoen.
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