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[コメント] 女渡世人 おたの申します(1971/日)

画一的な任侠映画のパターンからの脱却を目指したオリジナリティある脚本が先ず良い。これは後藤Pと笠原のせめぎ合いか?そしてやはり最終的には藤純子を褒めちぎるところに落ち着くのだ、私的には。
sawa:38

鶴田や高倉の主演作で「おんな」として助演する藤純子は特に見るべきモノは無い。

彼女が映画史で特筆されるのは、主演で男役つまり「強いおんな」を演じた場合のキレの良さなのだ。小股の切れ上がったイイ女という表現があるが、それはまさに彼女をしてそう言わしめるのだと思う。

だが、本作の藤純子はちょっとばかし感じが違うのだ。彼女の役柄は「日陰に咲く花」が協調され、従来の「強くキレのいい女」ではなく、「哀しく強い女」である。

父であり本作のプロデューサーでもある俊藤浩滋は、ソノ筋上がりの人物でソノ人脈を利用して任侠映画を確立し、さらに東映フライヤーズへの監督移籍問題などで東映にとって大貢献した大物であった。そして弱点もまた「ヤクザへの共感」であった。そんな彼と脚本の笠原和夫の路線対立は有名であったという。そんな中での本作は後藤色が薄まり、笠原色が強く打ち出された結果であると見てよい。

彼女は本作でキネマ旬報の主演女優賞を獲った。良い芝居をしたと思う。特にラストのショットでは絶妙の表情を醸し出し、女優としてのみならず作品の格を一段上げた感すらある。従来の「強くキレのいい女」で「スターの座」を獲得し、本作の「哀しく強い女」で「女優開眼」をする。藤純子は着実に進化する過程にあったのだ。

そんなスター藤純子の突然の結婚引退。本作はまさに「日本映画の華」が散る間際の最高の美しさ・素晴らしさを切り取った作品なのである。だからこそ価値がある。記録に残しておきたい一本だと思う。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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