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[コメント] ロジャー&ミー(1989/米)

アメリカに追いつけ追い越せだった日本も、格差が芽生え始めたし、明日はわが身か。070909
しど

暗い暗い作品だ。撮影期間が長かったのか、市が企画したテーマパークや誘致したホテルも含め、街全体が寂れていく様子が納められていて、貧しくなる過程をまざまざと見せつけられる。街と人々が寂れ、荒んでいく姿が描かれる一方、富を保持する者はどこ吹く風。GM経営陣の判断では国内工場を畳むことが理に適った手段だったのだろうが、長い目で見れば、国内消費者を減らしGMの客を減らすことになる。

この作品が作られていた頃、日本はバブル経済の只中で、繁栄を謳歌していたことだろう。そして、20年を経て不況に行き詰まり、弱者切捨て政策の末に、ようやく景気の暁を見たような気分にはなったが、逆に、切り捨てたモノの負担の影が、徐々に忍び寄ってきている現在、フリントと同様の街並は、いまや、日本でも見られ始めている。この作品の中の鬱屈が、後の『ボーリング・フォー・コロンバイン』、そして『華氏911』に繋がるとするなら、日本でも、今見ておいたほうが良いのかもしれない。

ムーア自身は、この作品をステップに成功を掴んだが、家賃未払い者を追い出す保安官代理や学校に行くと語ったウサギ売りは、今、どうなってるのだろう。追い出された人たちのことは、とりあえず、見なかったことにする……。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)CRIMSON 荒馬大介[*]

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