[コメント] サンセット大通り(1950/米)
企画のアイデアだけでは決して生まれることは出来ない事件的な傑作がワイルダーによって完成されたことは実にうなづけることであったし、見事であった。何をおいても映画への愛、確かな技術があってこその価値ある作品である。わたしはやはり『イヴの総て』よりもこちらを推したい。そして何を差し置いてもグロリア・スワンソンであろう。すべては彼女の存在、演技に集約される。グロテスクを自らに課した荘厳なる演技が画面を支配する。確かに映画史的にも確実な評価がなされた彼女の演技ではあるが、もっともっと言辞が費やされる必要がある仕事であったと思う。そして、その本懐は、彼女が過去の大女優であったという配役が、彼女の実人生とオーバーラップしているということだけに生まれているのではなく、そうした彼女の実存を通して、すべての女性に去来する妄想ファンタジーの悲劇を象徴しているところに、物語の表現性がさらなる高みを生んでいる。その点で『イヴの総て』で描かれたアン・バクスター、ベティ・デイビスを通してのハリウッド内幕ものによる人間のグロテスクなものの比喩を超えた、真実(想像性)に迫る味わい深い世界観の創造に成功したといえる。エリッヒ・フォン・シュトロハイム、バスター・キートン、セシル・B・デミルなど、映画史を彩る強者たちが画面に佇む姿は、彼ら映画人が、この映画に、エンターテイメント以上の意味、価値を悟って出演していることが読み取れる。同時代的というよりも、その時代でなければ創造することができなかったであろう奇跡的な映画であるし、その誕生の陰にある“映画”という情動に思いを馳せることに意味がある稀なる大作である。
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