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[コメント] 3−4X10月(1990/日)

「王将」が強烈に痛い。
Pino☆

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 この映画、北野映画の中では凡作的に扱われることが多いが、部分的に観ると、意外に良いカットが多い。しかしながら、1本の映画として観てみると、後の『ソナチネ』や『HANA−BI』ほど、まとまり感が無いのが残念なところ。良い素材やアイデアは揃ったけど、作り込みに時間をかけなかったという感じが否めない。

 例えば、最後の爆破のシーンでは、自転車でヤクザの事務所に向かうダンカンをタンクローリーが追い越していく。これは、冒頭の野球の試合の展開と全く同じである。野球の試合では、ユーレイがヒットを打った後、前の走者のダンカンがホームインする手前でユーレイに追い越され、負け試合となっている(ちなみに、3−4Xはサヨナラ勝ちではないと思う。サヨナラ負けなんじゃないだろうか。)

 したがって、タンクローリーが追い越すシーンでは、観客に「ダメ男はまた負けてしまうんだろうな。」とか「今度こそダメ男は勝つのか?」とか色々想像させなければいけないところなのだが、残念ながらカットの繋ぎが悪くて、分かり難い。良いアイデアではあるのだが・・・。

 暴力シーンも、アイデアが豊富に盛り込まれている。後の『HANA−BI』の割り箸を目に突き刺すシーンや、『Brother』の切腹シーンなど、北野映画の暴力シーンには特別に痛いモノが多いが、私がこれまでの11作品(座頭市まで)を観て、一番痛いと思ったシーンは、実はこの映画の中にある。

 ズバリ、トカちゃんの指つめシーンである。無理矢理、包丁で指をつめようとするところまでは、それほど痛くもなかったのだが、その後が強烈に痛かった。なかなか渡嘉敷の指が切れないのに痺れを切らしたたけしが、「それで、ぶっ叩け」と女に向かって指差したものは、何と将棋のコマの置物!

 「王将」が包丁の上に振り下ろされる度に、響く渡嘉敷の絶叫。個人的には、数々の暴力シーンの中でも、5本の指に入る痛いシーンだった。この映画を観た後で、将棋のコマの置物を見る度、あのシーンを思い出してしまうのは僕だけだろうか?

 とにもかくにも、今の北野映画に比べれば、圧倒的に完成度は低い作品だが、現在の北野映画に至る1つの通過点として観ると、なかなか良い素材やアイデアに満ちた面白い映画である。

 ところで、ユーレイ君、本当に石田ゆり子とヤッちゃったのかなぁ? 羨ましいなぁ・・・。あ、夢か。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)田中 ゑぎ poNchi[*]

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