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[コメント] エレファント(2003/米)

「悲痛な惨事を題材に悲しい美しさを奏でる映像作品」、あるいは「主張することを禁じられた高校生たちの発表会」
パッチ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







■特別な美しさを持つ映像作品

なんともたまらない美しさを放つ。でも私には、「銃乱射事件という重い影を上手に使うことで独特の美しさを表現した映像作品」と見えてしまう。それは、変に心地よくて、その心地よさに浸っている自分が後ろめたい。

■高校生たちのメッセージが封じ込まれた映画

「台詞はほとんどアドリブ」だそうで、 「出演する高校生は、事件について何度も話し合った」のだそうだ。さらに、高校生の多くは本名で登場している。

これは、いつもの校内風景を映したのではない。高校生たちの、銃乱射事件を題材にした課題の発表会のようなものだ。でも、特定の解釈を込めないという足かせのためか、彼らが抱え込んだ悲壮感ばかりが伝わり、メッセージは伝わってこない。

一方で、いじめ、ゲーム、ナチス、ゲイ、銃社会、父母、肉体と精神のギャップ、規則、弱者への視線など、監督の少し偏りを感じる解釈が散りばめられている。

そのためか映画は、まるで事件が起きるのが当たり前のように、仕方のないことのように流れていく。誰が事件を起こしてもおかしくないかのように映し出される。

■一所懸命に伝えようとする姿勢の方が好き

問題をモヤッとした大きなもの、複雑で対処できないもののように描いて観客に委ねる姿勢には賛同できない。

どの解釈もそれがすべてじゃないことくらい、みんなわかってるんじゃないかと思う。だからこそ、マイケル・ムーアのように、問題に一つ一つ取り組むことの大切さをきちんと訴える方が好きだ。

個人に委ねるんじゃなく、話し合うことの大切さを呼びかけたり、二度と起こしちゃいけない!と心から叫んだり、命の大切さを懸命に唱う映画を望みたい。

(評価:★2)

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