心臓移植を受けなければ余命一ヶ月と宣告された大学の数学教師ポール（ショーン・ペン）、犯罪を繰り返したが２年前に刑務所で聖書の教えに触れてから熱心なキリスト教信者となったジャック（ベニチオ・デル・トロ）、建築家の夫と二人の小さな娘と幸せに暮らしているクリスティーナ（ナオミ・ワッツ）の３人の物語が複雑に入り交じる。そしてそれらの物語は一つに結びつけられたとき、そこに大きな悲劇が姿を現すのだった。

　この映画のテーマは命。21グラムとは、人が死んだときに減る体重だという。それは命の重さ。この映画には、妊娠中絶、人工授精、臓器移植、脳死、自殺、殺人、宗教など、命をめぐるさまざまな問題が織り込まれている。登場する３人はそれぞれ命をめぐって苦しみもがく。その姿は痛々しい。

　愛する人を失ったクリスティーナの苦しみは痛いほど画面から伝わってきた。その苦しみから逃れるために薬漬けになってしまう。誰だって彼女と同じ状況に陥れば、生きることさえつらく思えてしまうことだろう。その苦しみを与えてしまったジャックもまた苦しむ。神の愛を知ったはずの彼は神に問う。なぜ神は私を選んだのですかと。牧師はいう。神のせいにしてはいけないのだと。彼画素の苦しみから逃れるためには自ら死を選ぶほかなかった。

　しかし、本当に死を選んだのは彼らではなかった。彼ら二人によって、命を得たはずのポールだったのだ。なんという不条理なのだろう。それもまた神の御技なのだろうか。クリスティーナに宿った新しい命がこの映画の救いである。命とは、未来の可能性だと示唆してくれているようだった。

　映画に描かれていることは、決して遠い世界の話ではない。身近に起こっている悲劇なのだ。それらを緻密なドラマとしてこの映画は描いて見せてくれた。あまりにも重いが、ずしりと心に何かを残してくれるいい映画だった。