いいテンポ、いい展開の映画である。

「ど田舎」の象徴である下妻、ノスタルジーを感じさせるイチゴの暴走族ぶり（しかも原付）、現代日本の一側面である（？）桃子のロリータファッションといった、一見消化不良を起こしそうな要素が絶妙なバランスでブレンドされている。鍵となっているのはそれぞれのお互いに対する「そぐわなさ」で、それらが組み合わさることで、なんとも言えないほのぼのとした、思わず頬が緩んでしまう雰囲気を醸し出している。

しかし、これが、そういうエキセントリックな世界を作って、「スタイル」におぼれてしまいがちな他の映画と違うのは、底辺で流れているのが青春・友情物語というど真ん中ストレートの直球であるということ。「自分」を持った2人が友達になると無敵・・・単純といえば単純だけど、それが故に見終わった後の爽快感が素晴らしい。

正直言うと、この映画を観るまで、深田恭子という女優さんはあんまり好きではなかった。男子の悲しい性として、彼女が可愛いというのは認めざるをえないのだが、演技ははっきり言って大根だと思ってた。

しかし、この映画での桃子はハマっている。他の役者さんではこうはいかなかった。それに加え、終盤でのぶち切れ演技の時の表情の変化には、思わずハッとさせられてしまった。

それから、なんといっても土屋アンナのイチゴである。あの言葉遣いとノリは、中学・高校時代に周囲でよく聞いた会話を思い出せる。神奈川県もあんな感じでした。でも、彼女みたいにカッコいいやつはほとんどいなかったけど。

（映画はともかく）『CASSHERN』でもいい演技見せた宮迫博之や大した役回りじゃないので存在感が妖怪な樹木希林など、脇を固める人々もキャラが立っててすばらしい。

英語のタイトルをわざわざKamikaze Girlsとつけているところから見ると、海外からの評価も狙っているのかもしれない。しかし、残念ながらこの映画が出している雰囲気を外国人に分からせるのは至難の業ではないかと思う。ジャスコは分からないだろうし、特攻服はエキゾチックなもの（？）ぐらいにしか思えないだろう。頑張ってほしいけど。