女が解放されて「元の場所」に戻されるシーンである。オープニングと同じベンチに座る女。ただ違いは隣にヤクザが座り、ふたりの指が絡みあっている。

女は悪夢の世界から、幸せだった世界に復帰する。女のことを本心から愛するならヤクザが選ぶべき道はコレしかない。・・・映画的には・・・

しかし映画はそこで完結せずに究極の道を描いていく。女はヤクザと一緒にいたいが為に自ら売春婦として堕ちていく。

そう、「元の場所」のシーンで終わらせたなら都合の良いファンタジーで終わっただろう。この監督はそんな私のような甘ちゃんをせせら笑うように言う。「お前はリアルな恋愛知らないんじゃないか？」と。

そりゃこんなドロっとした異常な「愛」は経験したことないけど、これがリアルで現実の姿なんだと説教されたって困ってしまう。理解できない。

だって、ヤクザの心情はたっぷりと描いてあり、男としては理解できる部分が多分にあるんだけど、女の心情は描いていない。否、描き切れてはいないと思う。この程度の描写では女の心情の変化が理解出来ないのだ。

これはあくまで男の映画であり、女はまるで記号のような存在だ。

これでは男は誤解してしまう。変態ストーカーが増えないことを祈るしかない。