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[コメント] 怒りの日(1943/デンマーク)

なぬっ!?邪悪な力となっ!?
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







1943年のデンマーク映画ですが、映画の舞台は1600年代(だったかな?)のノルウェーです。これがフランス映画で、エマニュエル・ベアール姉さんとかリュディヴィーヌ・サニエ嬢とかが主演だったら、「さもありなん」と腑に落ちた気がするんですけどね。彼女らは小悪魔ですから。小悪魔女子大好き(<何の話だ)。でもこの映画はとってもモヤモヤするんです。これが邪悪な力なのか?

カメラがよく動く。移動大好き伊藤大輔くらい動く。そして女優の顔にわざと影を落とす。ハリウッドだったらあり得ない撮影。そこに「白と黒」が混在する。

この映画は「白か黒か」をハッキリさせません。そして監督は、誰の味方もしません。観客を登場人物の誰かに感情移入させる気がない。客観的に、第三者の視点で「見つめる」ことに終始しているように思えます。もっと言えば、女の性(さが)を描くことも、「なぬっ!?邪悪な力となっ!?」と寝返ってしまうボンクラ男を描くことも主眼ではない。先に例に出したフランス映画と違って、男と女の機微を描く気は全くない。ダバダバダ。

ドライヤーは、神の視点で人間ドラマを客観的に見つめます。しかし、良いとか悪いとか、何が善悪かとか、彼の基準で「白黒つける」ようなことはしません。主義主張はおろか、何も意見を述べていないように見えます。

しかし、この映画が撮られた1943年、デンマークはヒトラーの占領下でした。

おそらく、魔女狩りに似た状況が世間を支配していたのでしょう。「怒りの日」というタイトルは、聖書の一節であると同時に、ドライヤーの静かな主張だったのかもしれません。

余談

ところで、いまの日本語の呼び名はカール・テオドア・ドライヤーなんですね。昔はカール・ドライヤーって教わってたんですが、今や検索してもパナソニック製品しか出てこない。

(2021.12.26 渋谷シアター・イメージフォーラムにてデジタルリマスター版を鑑賞)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ジェリー[*] けにろん[*]

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