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[コメント] 死の棘(1990/日)

面白い!自宅の部屋の中、二人が同じ方向を見て正座して喋っているのを、一人ずつ撮って繋ぐ。やゝあって、相手(横)を見て会話するので、配置が分かる。二人とは、岸部一徳松坂慶子の夫婦。この冒頭の演出はラストにも呼応する。
ゑぎ

 小岩の家は、屋内から庭側を撮ったショットも、庭というか通り側から家を撮った画面も、露光オーバーのように白っぽいものが多い。垣根なんかは、まるで白骨のようと思いながら見る。現実離れした異様な雰囲気が出る。唐突な、浜辺の崖にトンネルのある風景。岸部が綱を引っ張ると船(哨戒艇か)が出てくる。兵士たち。あるいは、子供に話を聞かせる老人。子供たちが歌を唄いながら歩くショット。戦時中と分かる。この海辺の場面は、奄美大島か。何の説明もないが、フラッシュバックか。

 平田満にバイクで荷台を引っ張ってもらう場所はどこだろう。岸部の郷里ということか。坂を登る岸部と松坂と、ランニングする運動部の高校生たちがすれ違う、坂上から湖のような水辺が見下ろせる場所もどこだろう。いい画面を作っている。

 松坂の偏執シーンはどれもとても面白い。中でも、道で「あいつを喜ばせたのか?」と突然問い詰め始めるシーンがダントツでぶっ飛んでいる。岸部もおかしくなって叫ぶ。すると、野原で野球をしていた少年も叫ぶ。岸部は道を駆け出して、線路の方へ。2人して線路に寝る。その後、家で食パンを焼き、岸部に与える松坂。「困ったわ、お母さんが責めすぎたから、お父さんオカシクなっちゃった」って云うのがいい。こういう一時の寛解と愛らしくなる部分では、玄関の前でタクシーから降りた松坂が「帰ってきーちゃった」と云うショットが一番かも知れない。

 あるいは「肺炎になってやる。丸裸になりなさいよ。私も同じようにしてやる」と云い、松坂も下穿き(アンダーパンツ)だけになる場面。電灯のコードや、欄間に紐をかけ首を吊ろうとするが、ひっくり返る2人。あるいは、精神病院で沢山の看護師らの前でのビンタされ、注射を打たれて眠る松坂。

 ショットで白眉と思ったのは、お正月の家族での丁寧な挨拶の後、皆で凧揚げをする原っぱのショットだ。こゝは凄い。アンゲロプロスみたい。画面奥、原っぱの向こうに土手道があり、サイレンを鳴らした車が走る。子供たちが土手道に駆けていく、といったシーケンスショット内に複数の運動と感情を盛り込んだショットになっている。逆に、少し物足りないと感じたのは、木内みどりが見舞金を持って来る場面のキャットファイト演出。こゝはさらっと描き過ぎていると思う。もっと、ねちっこい、痛さのある演出の方が良かったのではないだろうか。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)Myrath

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