[コメント] フィラデルフィア(1993/米)
「病めるアメリカ」なんて一括り出来ない、根本的な問題を突きつける。
エイズの問題だけではなく差別、特に特定マイノリティーに対する根強い差別感情についてのアメリカ人(だけでもない気もするのだが)の一般的な反応が手に取るようにわかる。
デンゼル・ワシントン演じる黒人弁護士、あるいはアンディを追い込んでゆく弁護士事務所の面々。その感情は誰しもが持っている感情だと思うのだ。頭では理解できる。しかし、受け入れがたい気持ち。思わぬところにその存在が出てきた事で感じる当惑。そして受容することの難しさ。
観ている人はアンディの家族の場面でホッと息をつくことが出来ると思う。アンディの病を受け入れ、ボロボロになりながらも法廷に向かう彼を支える家族。暖かい情景は映画のエンディングまで続く。
一つ断言するとトム・ハンクスはこれ以上の演技は出来ないだろう。死に対する恐れと権利に対する渇望、そして次第に衰えゆく身体。並みのリアリティーを越えた狂気を観た。アカデミーは獲るべくして獲ったといえよう。
決して声高に感動を求めない。むしろその淡々としたジョナサン・デミの演出がこの映画のテーマをもっと強くしたのだろう。権利とは?差別とは?というようなことよりも、むしろこの映画を見た後に受容について問い掛けてみたい。
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