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[コメント] ウォルター少年と、夏の休日(2003/米)

てん(、)で話にならない、この邦題。
ワトニイ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この作品、内容はそこそこ良いのだが、邦題の付け方が三重におかしい!

《なぜ題名に「、」を付けるのか!?》

 この映画のタイトルを初めて見たとき、まず読点(「、」)の打ち方に驚いた。文の切れ目で打つ句点(「。」)と違って、「、」の打ち方はかなり書き手の裁量に委ねられている。だから、この邦題のように「、」を打っても間違いではない。

 しかし、国語を習いたての小学生は別として、一般的な感覚からすれば、あまりに「、」が多いと稚拙な文章に見える。確かいくつかの文章読本にもそう書かれていたと思う。この邦題くらいの単語数と単語の係り方なら普通は「、」は打たないのでは? 『コックと泥棒、その妻と愛人』とかだったらわかるけど。『ウォルター少年と夏の日』じゃ、どこがいけないの?

 もしかしたら、余韻を持たせようとしているのだろうか? でも、それなら『ウォルター少年と…、夏の日』のようにすべきなのでは? 少なくとも「、」だけ打っても余韻は出ないと思うけど。

《なぜ原題をまったく無視するのか!?》

 こんなところに「、」を打ってるけど、それじゃあ原題はどうなんだろう?

 …と思って原題を見たら、もっとびっくり!! 原題は何と「Secondhand Lions」。直訳すると「中古のライオンたち」、あるいは「老いぼれライオン」くらいに訳しても良いかもしれない。これは、直接的には物語の中盤でサーカスから買い取られてくる老ライオンを指すのだろうが、同時に若き日に勇猛果敢だったが今は老いた主人公の老人2人(とは言っても、今なお十分勇ましいのだが)を暗示しているのだろう。だからこそ「Lions」と複数形になっているのだと思う。(この辺パンフに書いてあるようですが、買ってないので…。)

 なぜ「中古の」なのか、そしてなぜ「ライオン」なのかは、この物語の中で非常に大きな意味を持っているし、それゆえタイトルにもなっているのに、この邦題を付けた人は何を血迷ったか、この一番大事なところをまったく無視している。この邦題の付け方は、あまりにセンスがなさ過ぎる。

 もちろん「中古のライオンたち」では映画のタイトルとしてかなりインパクトに欠けることはわかるが、それにしても原題のニュアンスを活かすべくもう少し工夫すべきではなかっただろうか?

《内容について−内容と照らしても、この邦題はおかしい?−》

 邦題の酷さに比べれば、肝心の内容の方はなかなか良い話だったが、やはりアメリカ映画って大味だなあという思いを改めて強くした。特にラストでは、飛行機が納屋に突っ込んだはずなのに、どちらも大破せず飛行機の後部が納屋の壁からちょっとだけ覗いているだけという、まるで人目を引く店の看板のようなシーンなど、「あんな風になるわけないだろ!」と思わずツッコミを入れたくなってしまった。

 このシーンはてっきり、大人になって成功したら自分たちを訪ねてくれないウォルターを老人たちが呼び戻すための嘘かと思っていたのだが、この老人たちのキャラクターを考えれば、その方がラストとしては自然だったように思う。

 なお、ロバート・デュバルマイケル・ケインは痛快で型破りな老人を実に味わい深く演じており、特にデュバルは「『ゴッドファーザー』のあのトムがねえ…」と感慨深かったが、ウォルター少年(ハーレイ・ジョエル・オスメント)のキャラがあまりにも弱すぎて、存在感が希薄すぎたのが残念だった。実は私、何の知識もなしに観に行ったので、観終わってから「あれって『A.I.』の子だったのか!」と驚いたくらい。

 その意味では、物語の中でその程度の存在感しかなかったウォルター少年の名前を前面に出してしまったこの邦題の付け方は、三重の意味で噴飯ものだと思う。

(評価:★3)

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