[コメント] 華氏911(2004/米)
ヘラヘラと笑いながらメイクを施され、本番を待ち望む偽政者の面々は、本番と同時に演技に入る。犠牲者の面々は演技する余地も与えられず、かわりに家族の、残された者の涙が偽政者の演技を駆逐す。
想像力がない人は、他人の悲しみを理解できない。愛を知らぬ人は、簡単に戦争をしたがるのだ。
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ドキュメンタリーを撮ろうとしても、転がる全ての素材にはフィクションが内包されている。だからフィクション上の出来事こそが、ノンフィクションたらしめるのだ、という怪を作者と批判する人が共同で提示してくれた。
カメラを向けられ、直前までお茶目に笑うブッシュが一瞬で演技に入った瞬間、台本を書いたのは誰か、ということに焦点が移り、その答えをデーンと流れの中で持ってきてとてもわかりやすかった……が、ちょっとブッシュ関連書籍を読んだことのある人、NHKスペシャル好きの人にとっては退屈かも。そんな退屈している人は、次期大統領がどんな台本を携えてやって来るのか想像するには、いい肴になったんじゃないかな。
民主党のケリー(Mac派)が次回の大統領選挙の対抗馬らしいけれど、ケリーの「出自がユダヤ人」が伏線なのだと思うから、台本のテーマは自ずとこの作品とダブる気がしないでもない。そういえば、ケリーってイラク戦争万歳だった気が……。
ちなみに、コメントの「重い」というのはトリプルミーニング。パレスティナ問題を次回作に掲げるには、民主党を応援するムーアには荷が“重く”、上映には今作品以上に圧力が“重く”のしかかり、真実と一般庶民の狭間に緞帳を“重く”垂らそうとメディアが動いている最中だから。あ、ムーア自身も“重い”か。
(※とかいってパレスティナ問題で作ってきそう。その時は漏らさず、パレスティナの上層部の腐敗も描ききって欲しいな。もち高い高いしに行くよ。ムーアに潰され他界他界させられる予感がするが……。)
2004/08/25
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