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[コメント] コンボイ(1978/米)

ペキンパーのニューシネマ。ヒッピーに寄り添い、すでに黒人白人の共闘を謳って頼もしい。「たまたま先頭を走っているだけだ」というクリス・クリストファーソンの言葉に凝縮されているものがある。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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中盤は『バシニング・ポイント』、終盤は『イージー・ライダー』など想起させられる。『続・激突! カージャック』も似ているかも知れない。行き先などない逃走劇、『ペーパー・ムーン』の昔なら州境越えたら成功だが、本作はどうやらメキシコを目指すらしいが判然としない。この判然としないのがリアルなのだろう。目的などない、これが放浪だという感触がある。

老人が大挙して参加するのは『イージー・ライダー』の因業な地方老人というイメージを払拭するかのようだし、いかにもヒッピーな移動教会まで列に連なっている。知事が介入するのもニューシネマらしい展開。本邦のトラック野郎にこのスケール感はなかった。

マン法が語られている箇所があった。「不道徳的な目的で女性を国外に連れ出したり州間を移動させたりすることを禁じたアメリカの法律」らしい。保安官のアーネスト・ボーグナインは『北国の帝王』のパロディのような造形で、ヒステリーを老境らしいユーモアに包んでいる優れもので菅井一郎さん似。スツールの椅子と手錠の件がいい。

この相手するウェイトレスのキャッシ―・イエーツもいい。クリス・クリストファーソンに甲斐甲斐しく自分をバースディプレゼントしたのにアリ・マッグローに助手席さらわれるのは不当である。マッグローも放浪者、ということなんだろうが、彼女の造形は肉付けが足りずイマイチ抽象的に留まった。

序盤の白い砂が圧倒的で、裏道の砂埃の描写もいい。コメディタッチにスローモーションは馴染まないが、我々の先入観かも知れない。全てをからかい続ける劇伴はカントリー調にラップが乗るもので、ラップってすでにあったのかと発見だった(それともトーキング・ブルースのようなものなのか)。

現場は停滞して進まず、降板したかったとマッグローは回想している。蓮實センセイが演出放棄と評した作品。評判悪いので敬遠していたのだが、とても面白かった。

(評価:★4)

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