[コメント] マッハ!!!!!!!!(2003/タイ)
映画を見終った人むけのレビューです。
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エンドロールで一生懸命かつ楽しそうに撮影に臨むジャーさんの笑顔を見て、「なんでその笑顔を劇中で見せてくれないのか」と歯噛みする思いだった。終始何を考えているのか、自信があるのかないのかキレてるのかキレてないのか全然わからないジャーさんには到底感情移入することが出来ず、結果、「アクションシーンを待ちわびる」というあまり健全でない観賞になってしまった。
アクションシーンなんて呼ぶと耳さわりがいいけれど、実際に行われるそれは明らかに暴力描写であって、人が人を傷つける行為なんです。観客がその暴力に共感や爽快感を得るためには暴力を振るう人間に対する理解が必要で、ジャッキー・チェンの暴力が爽快なのは、観客の誰もが彼の気持ちを理解し、一緒になって怒れるからこそ「やっちまえ!」と思えるんです。
この作品の主人公はお師匠に「ムエタイを使うな」というお達しを受けたにも関わらず、闘技場でいともあっさりとカウンターの上段ヒザを放って相手をノックアウトしてしまう。そのことに対して彼は、「ああ、オレはお師匠の言いつけを破ってしまった」という自省も特にない。まずこのあたりで主人公とムエタイの関係が曖昧になってしまった。ムエタイが主人公にとって「どうしても封印しておかなければならない魔力」でなくなってしまったんです。彼は自分の身を守るためなら平気でムエタイを使う男として定義付けられてしまうわけです。にも関わらずタイの同朋が女のコのために立ち上がったときには、随分と逡巡する。なんだよ自分のピンチには平気で蹴るのに、目の前で人が殴り殺されようとしてるときにお前は迷うのかよと。お前が迷ってる間に彼は必要以上に殴られているじゃないかと。お前のスイッチはどこにあるんだ?お前にとって本当に譲れないモノはなんだ?いったい、お前は、誰だ?そこらへん、ジャッキーやブルース・リーは暴力を振るう前にすごくわかりやすく提示してくれるんですね。
アクション俳優の仕事はアクションを見せることでは決してない。すごいアクションを見せるだけなら、それこそスタントマンの仕事であって、主役を張るからには人間を見せてくれなくちゃいかんわけです。観客はあなたの暴力を見て感心したいわけじゃない。あなたと一緒に泣いて笑って、あなたと一緒に怒って一緒に悪者をブッ飛ばしたいんです。そこらへん肝に銘じて、がんばってほしいなぁ。何しろ、トニー・ジャーは笑ったらかわいいんだから。
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肝心のアクションでは、フットワークの軽いパーマ男との試合が面白かった。相手が蹴りを出そうとするのを読んで脚が伸びきるより先に前で押さえるという動きは、アクション映画では滅多に観られない「魅せるディフェンス」だったように思います。あとトゥクトゥクのカーチェイスは楽しかったです。
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