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[コメント] フォレスト・ガンプ 一期一会(1994/米)

主人公とそれが体現するものが嫌いです。
dov

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







どうやら私、こういう「バカで純粋ゆえに人生の真実を知っている」みたいなキャラには虫酸が走るみたいです。『レインマン』のレイモンドくらいの扱いなら気にしませんけどね。

ええ、作品自体は吐き気がするほどよく出来ていると思います。アメリカのカントリー的な風景を舞台に、シングルマザーの理想的な良母がいて、すっげぇ可愛い隣の家の女の子がいる。母は息子の為に先生(理事長だったかな?)とセックスして、隣の家の女の子は父親に性的虐待を受けている。何てカワイソー! この世には悪があり、正しく生きる(母や幼馴染のような)人にも避けられないつらいことがある! 問答無用でそう思わされますね。

ガンプは無知? 純真? そういうアメリカの良心っていうんですか? を体現してドロドロした歴史を駆け抜けてゆく。タロットの"愚者"よろしく次々と成功してはそれに拘泥せず先へと向かってゆく姿には問答無用のカタルシスがあるし、アメリカの庶民を自認する方々はそこに自分を重ねられるのかもしれません。

私は日本の庶民なので、ちょっと重ねられないですけどね。だって思考停止して「フセインは悪いヤツだ!」とかやった結果が今の中東の有様でしょ。フォレストに殆どワケもなく殴られた人々の方に同情してしまいますよ。たとえ彼らが演出上問答無用に「悪」に見えたとしてもね。

そういう問答無用さでストーリーを纏めていって、小憎らしいほど問答無用に美しいアメリカの景色が描かれる。フォレストは問答無用で戦友を助け、教会へ通うといった問答無用に「正しい」倫理を体現する。戦友の死、母の死、恋人の死、あるいは息子に「パパ大好き」と言わせるといった問答無用に「腹にくる」シーンを重ねる。もはや『フォレスト・ガンプ』の正当性は問答無用に確固たるものとなりました。迂闊に批判なんてしようものなら、「障碍者差別か?」「お前には友情の良さが分からないのか?」などと袋だたきに遭いそう。ほんとアメリカの正義って問答無用だな!

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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