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[コメント] フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白(2003/米)

その男のミドルネームは「ストレンジ」、数奇な彼の半生とアメリカの運命。
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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非常に示唆するところの多いドキュメンタリーであった。

第二次大戦〜ベトナム戦争の時期のアメリカでは、マクナマラのような優れた研究者が優れた経営者になり、そして豪腕を揮う軍の指揮官に就く運命にあった。いろいろなフィールドで活躍した彼が、どの場でも共通して推進したのは効率化である。

いかに敏腕で頭の切れる彼でも、ベトナムの泥沼に向かうアメリカの舵取りまではうまくいかなかったというのが普通の捉え方なのかもしれない。ただ、研究・産業・軍隊といったフィールドにおいて、効率化を進めていったこと自体が、人間を阻害し、非人間的なシステムを産み出してしまったようにも思える。つまり、効率化そのものがもつ副作用を、たまたま優秀なこの男がきれいに引き出してしまったのではないだろうか。まるでフランケンシュタインを産み出した博士のようなマクナマラが、現在のアメリカという巨大なモンスターを産み出した。(とはいっても、その立場に座っていたのがたまたま彼であったにすぎないのだろう。もっと頭の切れる男がそこにいたら、その男がもっと巨大な怪物を産み出していたのかもしれない。優秀であれば誰でもよかったのだ。)

この男が自らに課す一つのシンプルなルール。都合が悪いと思ったときには、口をつぐむ。そのとき、アメリカというモンスターは沈黙し、霧の中に姿を消す。彼は黙して語らない。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] ねこすけ[*]

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