[コメント] コラテラル(2004/米)
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殺し屋を乗せたばかりに平凡な日常から切り離されてしまったタクシー運転手の被害(コラテラル)を描く。よって主人公はフォックスの方なのだが、実際に強調されているのは殺し屋を演じるクルーズの方。なんでもマン監督が強力にクルーズを推したそうで、これでオスカーを狙うと豪語していた。
確かにクルーズのキャラ立ちははっきりしていた。初めての老け役(と言うか髪の毛が白いだけだが)と悪役に挑戦したはずだが、新境地を見事に開発していた。
ただ、キャラクターこそはっきりしているものの、物語としてはどうかな?クルーズ演じるヴィンセントは確かに腕は立つが、やってることはとてもプロとは思えないほど大雑把。そもそも自分が殺し屋であることをたかだかタクシーの運転手に知られてしまって、そのままマックスの運転するタクシーに乗り続ける神経はなんだ?最初の殺しが発覚した時点でマックスを殺してればこんな事態には陥らなかったはずだぞ。しかも大切な鞄をタクシーの中に置き忘れてたもんで、危機に陥るわ、店のスタッフも客もいる可能性のあるバーで殺しを行おうとか、逆に人の多すぎるところで銃ぶっ放すとか、本名かどうかは分からないにせよ、警察の張り込んでる店で自分の名前をマックスに言わせたりするわ…ざくざくと出てきてしまう。そもそも5件もの連続殺人を一晩で一人でやれると思った時点で自意識過剰だろ?プロってのはあんな行き当たりばったりに殺しをするもんじゃなく、あらかじめちゃんと計算して行うものじゃないのか?(その辺同じクルーズの『ミッション:インポッシブル』(1996)ではしっかりしてたのにな)。関連した連続殺人なんだから、警察もその事に気づくことくらい分からなかったか?FBI管轄の事件だったらなおさら。
それと細かいことなんだが、ヴィンセントはサイレンサー付きの銃を持っていて、それでターゲットを次々に屠っていくのだが、関係ないちんぴらを殺す時は大口径の普通の銃を使ってる。町中であんなでかい音立てたらばれるって。
ストーリーに関しても、せっかくタクシーという密室状態の中で、脅迫者と強迫されるものが一緒にいるのだから、いわゆるストックホルムシンドロームの話に持って行く部分が全然無かったのもなあ。
文句ばっかりになってしまったけど、改めてマン監督の目指したところを考えてみると、これって70年代のフランスで流行ったフィルムノワールの作品によく似てる事に気がついた(ツメの甘いところも含めて)。そうか。マン監督、クルーズを第二のアラン=ドロンにしたかったんだな。それだったら分かるぞ。
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