[コメント] 隠し剣 鬼の爪(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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商家(伊勢屋)の嫁が女中のように扱われる、こんなことが本当にあったのかどうか知らないんだけど、嫁の仕事は跡取りを産むことだから、あんまりなかったんじゃないのかな。いずれにしても、女中にできることをやって体を壊した松たか子は、見た目に似合わず虚弱な体質だったってこと。こういう女性は大切にしなければいけない。この価値観は永瀬と共有できるのだが、わからんのは、なぜこの女を蝦夷まで連れて行こうとするのかだ。好きだから? 基本的にきわめて自己中心的な男なんだけど、これを女の方で「命令なら」とか言って受け入れちゃうんだから、いい嫁さんを見つけたね、としか言いようがない。しかし、男の自己中を認める女は、自己中を(後略)
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惚れた女のために武士道を捨てる。愛は、武士道以上に高い価値を持つ。こういう描き方ならまだ理解できる。だがこの永瀬を見るかぎり、イヤイヤやってた侍も辞めることができ、おかげで松とも一緒になれる、一石二鳥だ嬉しいな、こんな感じにしか見えない。これは、片桐という侍像の矛盾が、武士道を魅力的に描くことに失敗していたからだと思う。彼は、従来の武士道が自分に強請するものに嫌気を感じつつ、一方で日々変節しゆく武士道については普通に受け入れていた。この映画は、武士道を低いものと評価しているのだ。それよりは愛の方がマシだ、という描き方である。愛って、そんな程度のもんですか。まあ、そうかもしれないね。けど、だったら映画にすることないんじゃない、というのが私の考え。
緒形拳の演じていた悪役が、永瀬の隠し剣で殺されるシーンには、それなりにカタルシスを得た。緒形の演じ方は通りいっぺんで薄っぺらなものだっただけに、これは物語という構造がもたらす、説得と理解の作用によるものだと思う。物語の力を改めて認識させられた。
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長くなったので、映像については省略。汚くはなかった。
60/100(04/10/30見)
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