[コメント] フリック(2004/日)
「映画」による「ミステリ」の解体と再構築。その挑発的な作業に興奮する。
人の心の闇が猟奇事件を起こすなら、それを追う側の人にもまた心の闇があるはずだという至極真っ当な提起だろう。数多ミステリに対する真っ向からの問いかけと見た。
推理と妄想の境目はどこにある?
刑事は事件を解決することで何を得る?
真実は誰を救い、誰を苦しめる?
刑事村田の行動と妄想は観客に理解を求めはしない。ただ私たち観客が謎を提示されたときに当然思い浮かべる(あるいは心構える)結論に向けてのプロセスをひとつひとつ打ち崩し、やがて私たちは村田というひとりの男の心の闇に侵食されてゆく。
巧妙な脚本と演出も去ることながら、役者香川の「凄み」としか言いようがない表現力があってこそつくりえた映画だろう。期待をはるかに上回る力作だった。
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