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[コメント] あずみ2 Death or Love(2004/日)

使命を描こうとして、死命がとんと描かけていない。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







あずみは後悔しちゃいかん。沸き立つ感傷を抑えつつ人を殺める姿こそが刺客あずみを演出するはずなのだが、戦国時代の思春期とも思わせる悩める少女だった。それに合わせたように登場人物はやさしい人ばかり。盟友「ながら」はもともとやさしいキャラだったが、野盗の金閣・銀閣もお人好しだったし、家康の知恵袋の天海までもあずみの身を案じる始末。前作のじいのような締めるキャラがいないのは痛い。任務に忠実な仕事人といえば敵方の甲賀集ぐらいだった。それも忍者っぽくないし・・・。

ほんと戦闘は刺客、忍者、侍、野盗が一緒くたで区別がまるでない。 オープニングでこそ忍者対刺客はなかなか良かったが、最低戦闘シーンではそれぞれの得意分野を演出すべきでしょう。刺客や忍者は裏社会の象徴なのに、明るみの格闘ばかりで闇が演出されていないのもいただけない。 それにしても天海を守る服部半蔵が弱すぎでないかい? ここまでくるなら『キル・ビル』つながりで半蔵(ハットリハンゾウ)とこずえ(ゴーゴー夕張)の対決があっても良かったかも。

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<<余談>>

あずみが今回標的とした真田昌幸といえば落ちぶれたと言えど、武田信玄健在の頃から家康軍と3度闘って全て大勝している自他共に認める名だたる智将。ここまで家康をてこずらせた武将は他にいない(秀吉ですら家康に戦で勝ったことがない)。

戦国の世が終わり天下太平の世になることは忍者の失業を意味するので、本作の甲賀衆が真田昌幸に行く末を託したのは筋が通っているし(私は昌幸が雇ったのではなく、甲賀衆が昌幸を頼ってきたと理解しました)、それを阻止しようとしたあずみも理に適っているように思われる。

が、、、

実際の歴史では父昌幸は九度山から動かない。 家康に一糸報いるべく動いたのは次男幸村だった。 その大阪城への入城の劇的な風景たるや多くの語り草となるほど。幸村は大阪城に立て籠もった豊臣軍約10万の軍師となり大阪の陣で家康軍と闘うこととなった。ところが、幸村が対峙した家康軍には幸村の兄信幸の真田軍がいた(信幸自身は病で大阪の陣には出陣せず)。

その経緯とは・・・

秀吉の死直後、昌幸が家康との和睦のしるしに、長男信幸の妻として家康の猛将本田平八郎忠勝の娘を迎えていたのだった。これは、後に豊臣・徳川のいずれの世になろうと真田家滅亡を防ぐべく、秀吉死後の混乱の中でなされた父昌幸と兄弟の先見によるもので、信玄と秀吉に仕え、家康とは敵対関係を終生貫いた昌幸の究極の決断といわれている。

関が原で大勝した家康は、抵抗した真田昌幸・幸村親子に切腹を命じようとするが(この戦でも真田親子は家康の息子秀忠率いる別働隊に寡勢ながら大勝していた)、長兄信幸は家康に2人の助命嘆願する。これに家康4天王の2人、本田忠勝と井伊直正までが加わったので家康は昌幸・幸村親子の命を九度山蟄居でしぶしぶ許すこととした。

結果として“父”昌幸は九度山を出ることなく病没、“次兄”幸村は大阪の陣で家康の本陣に迫るも戦死、“長兄”信幸は真田家を守ることことに成功した。兄弟は父の2つの意思の代弁者であり、父はそれを見守った。親子3人はそれぞれの立場を見事なまでに満了したのだった。

さて、話しは戻って本作。あずみが天海の命を受け真田昌幸を討つこと自体、家康自身が真田信幸と重臣の顔を立て一度は許したからには天下人たる器量を失することになりかねない。家康には昌幸を暗殺するだけの口実が無い。もしあるとすれば、それは昌幸が約束を破って九度山から動くことが前提となる。

本作でこの背景を少しでも取り入れれば、真田昌幸を頼った甲賀衆はずっと興味深い存在となっただろう。黒幕の家康の内命を受けた天海が、第3の勢力(闇)を利用して、真田昌幸を九度山から動かすよう甲賀衆をそそのかし、天海は更にあずみを利用してその甲賀衆もろとも昌幸を討ち取り真実を闇に葬ったストーリーを考えることができるのではないだろうか?

天海を討ち取ろうとしたこずえも巡り巡って天海の手の内にあった。あずみだけが無知ゆえ始末されないエンディングとすれば、あずみの「なんなんだ、これは〜〜!!!」の遠吠えもずっと切なくなったはずである。 

まぁ、この真田家を巡るあまりにもドラマチックな背景が蔑ろ(ないがしろ)にされているようでは、あずみ始め登場人物の立ち位置がおかしくなるのは無理もないかもしれません。

(評価:★2)

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