[コメント] オー!マイDJ(2004/韓国)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ドラマとして破綻しているのは、脚本自体の問題ではなく、演出と編集がその意図を表現し切れていないんだと思う。だから「さよならUFO」という原題がしっくりこないような出来になっているんじゃないだろうか。
キム・ジンミン監督のテンポ感のある演出は部分部分では悪くないんだけど、主人公の気持ちとその変化の描写が粗雑過ぎて、そもそもロマンスものとして成立していない。後半になるとさらに「経過」をすっ飛ばして「結論」のシーンだけをつないだようで、押し付けがましさだけが残る。
問題の多くは、韓国映画特有の過剰さと笑えないギャグを体現するイ・ボムスに関係していて、20代半ばと言う設定だけどどうみてもオヤジ臭さの滲み出す30代にしか見えないし、完全なミスキャストだと思う。制作側としては実績のある彼を起用したかったのかもしれないが、終盤のクライマックスである浜辺のシーン、あるいは弟とのシーンなどでの「やたらと感情的で押し付けがましい」演技は眼を背けたくなるレベル。もし制作の意向を受けて彼の存在感を強調しようとしたために演出がバランスを欠いたとするなら、要するにひとりでこの映画をぶち壊している、ってことなんじゃないだろうか。
まあ、上記のような映画としての出来云々を措いておいても、よく考えるとそもそもこの話自体、韓国でも経済発展に伴って男が幼稚化・軟弱化し「ダメな僕」となりつつあるのに、いまだに女性に対しては身勝手なエゴを押し付けているようなダメダメな話で、そこをUFOへの夢と80年代への郷愁という「マジック」で無理やり正当化しようとするくらいならまだともかく、女性を無理に全盲という立場に設定してまで、男の幼稚さ未熟さ身勝手さを受け入れてくれ、というドラマを成立させようとしたのであるから、そう考えてくると腹が立つw むしろこれは失敗作になって良かったのかもしれないな。
何にしろ、結局は今となっては貴重な故イ・ウンジュの出演作としてだけ価値がある作品。彼女の自然な存在感は韓国映画界では貴重だと思っていたが、つまり、それだけ周りとは合わなかったってことなんだろうか。
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