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[コメント] クローサー(2004/米)

台詞の面白さとナタリーのストリップに惹かれたため、鑑賞直後は悪くないという印象を持った。がしかし、“真実と嘘”から描く愛や、役者の起用法や演出などを再考すると、根元から間違っていたようにすら思える欠陥映画だった。(2005.12.4.)
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 台詞が面白い。台詞だけで見せきる力があり、その点で飽きずに鑑賞できた。だが、その台詞も映画を最後まで観ると、実は大きな意味を成していなかったのではないかと疑ってしまう。

というのは、“嘘”や“真実”という言葉が、男女関係に絡めて何度も登場するが、それらのキーワードが“愛”の何を描いていたのだろう。それを追求せずに、幕を閉じてしまった。男女関係の複雑な部分を会話から描こうと試みていたが、最終的に答えや問いかけといった、観客へ提示するものが何もなかった。

4人の恋愛模様は見て取れました、それでその先は?、と問いたい。『パルプ・フィクション』などのように何も意味がないけれどとにかく面白いのとはわけが違う。意味深な台詞を散らばせたくせに、それを束ねず放置している。謎解きなどなかったミステリーのよう。“嘘”や“真実”といったキーワードを最終的な4人の関係なりに収束させなくては、雰囲気のある映像と台詞と音楽が流れていただけで終わってしまう。

 役者では、下馬評通り、ナタリー・ポートマンは確かに魅力的だった。クライブ・オーウェンとの個室での交流シーンは、映画の中でもっとも美しいシーンだった。あそこまで大胆な彼女を見られたことに対する満足度は高い。

しかし、感情をもろに表すシーンでは悲しみを伝え切れていない印象もあった。彼女は演技が良かったというよりも、二面性のある役柄と意外性が味方をした感じだろう。ただ、結局のところナタリー・ポートマンが一番光って見えるようではこの映画はダメだと思う。4人しかいない登場人物の中で、それぞれスター4人が均等に力を発揮するか、ジュード・ロウジュリア・ロバーツに重きを置いて描写に差をつけるか。この映画は、誰を描きたいのかも焦点が曖昧だ。鑑賞後に考えると、マイク・ニコルズの演出はミスを犯していると感じる。

 鑑賞後に考え直すと、そもそも過ちが多々ある映画だったようにすら思えてくる。台詞が面白かったのが長所だと思うと、じゃあ戯曲を活字で読めば良かったわけだ、と思う。追求すれば追及するほど、落ちていく。3点をつけようと思ったが変更だ。これは間違いなく欠陥映画だ。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ゑぎ[*] G31[*]

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