[コメント] 炎のメモリアル(2004/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
一言で言うと「感動しました!」で、終わってしまいたいところですが、本作の演出についてちょっと語らせてください。
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本作の2つの時を同時進行で進ませる演出は中々凝っている。回想から始まる構成は私の好みとするところなのだが、本作のいいところはどちらも前向きなところ。
概して、演出上の回想は『サンセット大通り』や『バーバー』などのように其処に至った経緯を後悔交じりに省みたり、『タイタニック』や『プライベート・ライアン』などのように若き日の様々な想い出に耽るノスタルジーを意図して挿入されることが多い。本作のような同時進行の代表作『ゴッド・ファーザーPARTII』も演出上、親子の対比を意図したもので、息子の現在を省みる意図が含まれている。 時を遡る構成で前向きなストーリは成立し難いのだ。
本作はどちらの流れも、すなわち、主人公があのビルに取り残され、最期の判断を下すまでのシーケンス、主人公が消防士になりLADDER49に加わり成長していくシーケンスも、主人公の前向きな思いをベースに描いており、私の知る限り、なかなかありそうで無いパターンだと思う。彼が仲間を犠牲にしないために「最後の最後」で死を選んだのも決して後ろ向きではない。このような演出は作者の消防士へのリスペクトを感じさせるに十分であった。ストーリーに『バック・ドラフト』のような捻りが無いのも、彼らのストレートさを感じさせて気持ち良い。
また、落下した主人公に装着された救命アラームの発出音は、2つの時の流れを結ぶアイテムとしての意味を次第に帯びさせつつ、家族の心配を内包しつつも常に危険と隣り合わせの救出作業に取り込む彼らの姿を演出していたし、クラシカルながらもスリルを感じさせる効果もあった。それを取り巻く炎の迫力も素晴らしかった。
ホアキン・フェニックスは本作で初めて根っからいい人を演じたのではないでしょうか? 今までの印象では、欲深い悪役か、嫉妬心の強い曲者ばかりだった様に思う。特に先日日本で公開されたホアキン主演の『戦争のはじめかた』などは本作と真っ向からぶつかるキャラクターだった。彼の持ち味はここ(曲者)にあると感じつつも、本作の不器用なまでに正義感の強い役柄もマッチしていた。絶妙だった言えるのではないでしょうか?
妻を演じたジャシンダ・バレットも好演。ジョン・トラボルタも上官としていい味出していたし、老メーク?のロバート・パトリック、カッコいいビリー・バークもよかった。いい意味で、これだけの役者を揃えながら誰も突出した演技でないのは彼らのチームワークを感じさせて良かった。
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